「谷山浩子コンサート~デビュー40周年大感謝祭~」ライブレポート 11月10日 東京国際フォーラム Cホール

5年前に35周年コンサートを見た日からこの日を待ちわびていたと言っても大げさではなかった。35周年コンサートで聴いた代表曲のメドレーがとても素晴らしく印象に残ったので、40周年コンサートはきっとそれ以上のサプライズな企画が用意されるのだろうと、勝手に期待していたのだ。そしてその40周年コンサートを見終えたいま、5年前に抱いた感情はけして見当違いのものではなかったと確信した。しかも、自分の想像を大きく上回る、とても素晴らしい内容のコンサートであった。

11月10日に行われた「谷山浩子コンサート~デビュー40周年大感謝祭~」東京公演は、事前に3時間の長丁場になるという告知があり、セットリストや構成も含めて大いに期待は高まった。近年、谷山さんのコンサートはアコースティック編成のシンプルな構成が多かったので、久しぶりにバンドサウンドで聴くことができるという期待は大きく、会場にはそんな思いをもった多くのファンが日本中から駆けつけていた。開場前の雰囲気も温かい空気に満ちあふれ、早くから素敵な40年間集大成的コンサートになるという予感があった。

本公演は谷山さんのルーツをたどる意味をもっていたため、コンサートはピアノの前に座る谷山さんの語りからスタート。自分がどういう子どもで、どのように音楽に興味をもっていったのかが丁寧な口調で語られていく。1曲目は7歳の頃に作った「ほしのよる」、続いては10歳のときに作った「クリスマスツリー」を当時の貴重なエピソードとともにピアノの弾き語りで披露。そこから、どのように最初のデビューを果たしたのかが語られ、15歳のときのデビューアルバム『静かでいいな~谷山浩子15の世界~』から「天使のつぶやき」が歌われた。

前半は今年の「猫森集会」Dプログラムのように、トークを織り交ぜて歴史を振り返る部分が多く、そのバックには今回惜しくも歌われなかった曲が流れた。シングル「窓」をバックにしたトークでは、当時ある音楽評論家に「ギリシャの海も結構だが、大人の恋愛を歌えるようにならないと……(中略)、将来「メルヘンばばぁ」になりたいのなら結構だが」と音楽雑誌に書かれて傷ついたエピソードを話したあと「おかげさまで(メルヘンばばぁに)なりました!」と返して、会場からは惜しみない拍手が送られた。このくだりは翌日多くのニュースサイトでも取りあげられた。その後、前半は代表曲が時系列に選曲され、「ねこの森には帰れない」「恋するニワトリ」「まっくら森の歌」という名曲が続いた。

15分の休憩をはさんだ後半は、谷山さんいわく「今まででいちばんバンドメンバーが多いコンサート」となり、計7名での演奏がスタート。1曲目は「王国」。名うてのミュージシャンによるバンド演奏で聴いた「王国」はCD以上にダイナミック、かつ雄弁にその世界観を表現しており、観衆は一気にその中に引き込まれていた。いかにこの曲が谷山ファンに愛されているかを再確認した瞬間だった。後半の「電波塔の少年」「よその子」はこれぞプログレッシヴ・ロック! 個人的には今回のコンサートのハイライトだったように思う。白熱していくバンドの演奏に合わせて歌う谷山さんもテンションが高くなり、とても気持ちよさそう。演奏に合わせた効果的な照明も印象的であった。谷山さんのロック魂が揺り起こされたかのような演出に思わず気持ちが高ぶった。今まで観た谷山さんのコンサートの中でも、最も強烈なインパクトだったかもしれない。また、本編最後から2曲目に演奏された、谷山さん自身がフェイバリット・ソングとして挙げている「さよならDINO」も卓越した演奏力が楽曲の真価を存分に引き出しており、強く心が動かされた。

アンコールではニューシングル「同じ月を見ている」を披露。谷山さんがツイッターを見ていたら、「『同じ月を見ている』と『銀河通信』の違いがわからない」という書き込みを見つけたそう。『同じ月を見ている』は地球人の、それも同じ時間に月を見られる範囲の、知らない誰かと会話しているので、会話をしている距離がかなり縮まった」と説明をしたあとに、この2曲が続けて歌われた。超満員の鳴り止まない拍手の中で行われたWコールでは、「意味なしアリス」を弾き語りで披露。今の谷山さんの心境を現わしているのだろうか。いかにも谷山さんっぽい、ほっこりとした終わり方であった。

3時間の長時間にわたるコンサートだったが、冗漫なところは一切なく、すべてがハイライトといってもいいくらいの充実度であった。40年もの間、大きなブランクもなく継続的に活動を続けてきた谷山さんの揺るぎない才能を再確認するコンサートになった。理解者が少なかった時代も自身の才能を信じ、マイペースで歩いてきた谷山さんの40年の足跡を時間旅行で体験したような感覚とでも言えばいいだろうか。とても満ち足りた気持ちで会場をあとにした。そして5年前に抱いた感情をまた思い出すのであった。

「谷山浩子コンサート~デビュー40周年大感謝祭~」
11月10日 東京国際フォーラム Cホール

<セットリスト>

01-1.ほしのよる
01-2.クリスマスツリー
01-3.天使のつぶやき
02.お早うございますの帽子屋さん
03.カントリーガール
04.ねこの森には帰れない
05.たんぽぽ食べて
06.恋するニワトリ
07.まっくら森の歌
08.てんぷら★さんらいず
09.風になれ~みどりのために~
10.王国
11.海の時間
12.ひとりでお帰り
13.カイの迷宮
14.ドッペル玄関
15.さよならのかわりに
16.電波塔の少年
17.よその子
18.さよならDINO
19.NANUK

En1.銀河通信
En2.同じ月を見ている
En3.意味なしアリス

<メンバー>

谷山浩子(Vo./Pf.)
古川昌義(G.)
佐藤研二(B.)
高橋ロジャー和久(Dr.)
斎藤ネコ(Vl.)
山川恵津子(Cho.)
石井AQ(Syn.)