--2008年の「猫森集会」以来、過去3回共演されているお二人ですが、まずはお互いを認識したきっかけから教えていただけますか。
ROLLY(以下R):私が谷山さんの曲を初めて聴いたのは小学校のとき、姉が「ねこの森には帰れない」という曲を聴かせてくれて、谷山さんの存在を知りました。のちにクイーンの「キラー・クイーン」を聴いたときに、 "この曲は「ねこの森には帰れない」に似てる"と思ったんです。
実際にお会いしたのは、2007年に私が「三文オペラ」というミュージカルに出演していたときに、谷山さんが観にきてくださって、私の楽屋で挨拶させていただいたのが最初です。
谷山浩子(以下谷):「猫森集会」のゲストを決めるミーティングのとき、あるときからディレクターやマネージャーが何度も「ROLLYさんはいかがですか?」と提案してきたんです。わたしはROLLYさんについてはTVのバラエティ番組を通してのごく断片的なイメージしかなかったので、どうしていいかわからず、わたしとしては、ROLLYさんのほうが困るんじゃないかと思っていたんです(笑)。それで決めかねていました。
R:おそらく谷山さんは私がスタジオに入ってきた瞬間に、バドワイザーの缶でも「プシュ!」と開けるようなやつだとでも思っていたんじゃないですかね(笑)。
谷:声も大きい人で(笑)。わたしはROLLYさんのノリについていけないだろうなと、勝手に思っていたんです。それでも毎年「猫森集会」のミーティングのたびにROLLYさんの名前がでるので、そこまで言うのだったら一度ROLLYさんの生のステージを見にいってみようということになって、「三文オペラ」を見にいくことになったんです。それを見たとき、まず今までの印象とは全く違ったんです。わたしの知っているROLLYさんじゃないって思って、楽屋に挨拶をしにいったら、さらに違っていて、のらねこの時代が長かった猫みたいな人が出てきて(笑)。
R:それはすごい。最高の表現ですね(笑)。
谷:ドアを半分開けて、そこからそーっと顔を出すみたいな(笑)。そのときに、もしかしたらこの人と何かできるかもしれないって思いました。わたしは人を見て直感的に物事を決めるところがあるので。それで「猫森集会」に出ていただくことになって、最初の打ち合わせの時に人形の話で盛り上がりました。それも暗黒系の。ROLLYさんは人形が好きで、ファンの人たちと紀州の人形供養のお寺に行ったら夥しい数の古い人形があって…という話とか。ROLLYさんのおうちにある珍しい物の話とか。意外なくらい好きなものの趣味が似ていました。その後の打ち合わせで実際にギターを弾いてもらったら、それがまたすばらしく良くて。
--最初にリハで音を出したときはどういう印象でしたか。
谷:「猫森集会」のゲストに来てくださる方は、大抵リハーサルで初めて音を合わせるんですけど、ROLLYさんはリハーサルの前に予備的なリハーサルがしたいと言ってきました。練習熱心な人なんだなと思ってたけど、実はわたしの曲が複雑すぎるので、ROLLYさんが困ってたらしいです(笑)。
R:私は元々譜面が読めないんです。コードも3つくらいしか知らない(笑)。CだったらCとCmとCm7とか。それで、谷山さんからもらった音源を聞いて譜面を見てみると、見たことのないコードばかりが並んでいて、これはとんでもない仕事を請けてしまったと後悔しました(笑)。押さえにくいテンションコードも全部押さえなきゃいけない!ってすごく焦ったわけですよ。でも、譜面に書いてあるコードの音を全部ギターで弾く必要はないと考え直しました。自分はクイーンのようなギターを入れて、ブリティッシュ・ハードロックの世界を表現できればいいなと思ったんです。難しいテンションコードはキーボードでカバーしてもらえますから。それでリハーサルに入る前に、「こんな感じではどうでしょうか?」というのを聴いてほしかったんです。
谷:ROLLYさんの弾くギターは、わたしが今まで一緒にレコーディングやライブでやってきた人たちとは比較できないんですね。全然違うんです。すごく上手いのはもちろんですが、何て表現すればいいのか……。
R:男性ホルモンが少ないからじゃないですか(笑)。「俺」感が出てない。私やります! っていう感じはあるかもしれないけど、「俺」は出てこない。不気味な少女漫画的ファンタジーに大の大人はなかなか付き合いにくいんじゃないですかね(笑)。
谷:それはあるかも(笑)。
ROLLYさんのギターの上手さは、ひとつには曲のアレンジ力やプロデュース力というんでしょうか。その曲がもっとよくなる部分を見つけ出す力なんじゃないかと思うんです。だから、どの曲もビックリするくらいカッコいい曲になっていて、「猫森集会」の最初の年からすごくうれしかったのを覚えています。
--「猫森集会」で演奏する曲はどのような基準で決定していったんですか。
谷:わたしが大量に楽曲をROLLYさんに送りつけたんです(笑)。この中から選んでくださいという感じで。
R:そうでしたね(笑)確か30曲くらいあったと思います。でも私のほうからは最初に「ねこの森には帰れない」お願いしますって言っていました。谷山さんは、よもや私があの曲を選ぶとは思わなかったらしいですけど(笑)。
谷:ロックの人が選ぶ曲じゃないだろうなと思っていたので(笑)。
--ROLLYさんが最初に聴いた谷山さんの曲は「ねこの森には帰れない」だったわけですもんね。ROLLYさんは谷山さんから送られてきた曲の中で特に印象に残った曲はどの曲でしたか。
R:「あたしの恋人」ですね。あの曲を初めて聞いたとき、完全に1本の映画を見ているような感じがしました。私の恋人は飛行士で、乗っていた飛行機が墜落してしまい、恋人が落ちてきたけど死なずに生きていて(中略)寝たきりになってしまって、今私の隣にいる。その汗をタオルで拭いてあげる。
谷:解釈がさらに進化してないですか(笑)。
R:映画「ジョニーは戦場に行った」のような印象を持ちました。谷山さんの世界観はどこか洋風なんです。サンテグ・ジュペリの世界が入っているような。そこが大好きなんです。
谷:1曲の曲でここまで妄想を広げる方も珍しいですよ(笑)。
デビュー40周年
記念アルバム第2弾!
2008年の「猫森集会」で初共演し、その後何度もコンサートで共演してきたお茶の間のロックスターこと、ROLLYとコラボアルバムがリリース決定!
2012年09月12日(水)
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
YCCW-10178 3,150円(税込)
※植松伸夫氏ライナーノーツ+谷山浩子曲解説+ROLLY作品インタビュー掲載!!
【収録曲】