谷山浩子 Discography Guide

文/長井英治

ボクハ・キミガ・スキ

1991年5月21日

キャニオン/AARD-VARK
PCCA-00272

紙ジャケットシリーズ
2011/8/17
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
YCCW-10147
(Blu-spec CDTM仕様)

  1. ボクハ・キミガ・スキ
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:石井AQ・谷山浩子
  2. 約束
    作詞:谷山浩子 作曲:いしいめぐみ
    編曲:石井AQ・谷山浩子
  3. 催眠レインコート
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:石井AQ・谷山浩子
  4. 心だけそばにいる
    ~HERE IN MY HEART~

    作詞:谷山浩子 作曲:いしいめぐみ
    編曲:斎藤ネコ
  5. 手品師の心臓
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:石井AQ・谷山浩子
  6. 不眠の力
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:石井AQ・谷山浩子
  7. パジャマの樹
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:斎藤ネコ
  8. わたしを殺さないで
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:斎藤ネコ
  9. COTTON COLOR
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:石井AQ・谷山浩子
  10. 海の時間
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:斎藤ネコ

アルバム解説

谷山浩子というアーティストの本質は90年代以降に発表した楽曲の中にこそ、より濃い形で凝縮されているのではないか、と最近とみに感じる。90年代以降、谷山さんは歌作りにおいて歌詞より曲を先に作ることが多くなったというが、理由はそれだけではないと思う。でも、90年代以降に発表された曲は、言葉はもちろんのことメロディからも強いメッセージを感じるのだ。
1991年5月に発表された18枚目のアルバムが『ボクハ・キミガ・スキ』。この時期の谷山さんはアーティストとしてとても充実していた時期だったのではないか、と推測する。今まで開けてこなかった扉を開けて、新たな世界を提示してくれているように感じる。アルバムタイトル曲をもとに書いた小説も同時期に発表されている。小説に登場する少年は同性に思いを寄せているが、当時台頭し始めていたいわゆる「やおい」系の小説を意識したわけではなく(そもそも本人はやおいの存在を知らなかった)片思いの純粋性を表現するのにふさわしいと思ったからそういう設定にしたのだという。このアルバムで特筆する点はファン投票で常にトップの人気曲「海の時間」が収録されていること。一聴しただけで口ずさめてしまう究極の子守歌である。谷山さんいわく、人気曲は「パッと」した印象なのだとか。この曲はまさに名曲と呼ばれるにふさわしい1曲。この曲を聴くためだけにでも、買う価値はあると断言できる、マスト・バイ・アルバム。

谷山浩子さんの一言

「好きなアルバムです。曲の設定にこっていたり、道具立てがごちゃごちゃしているので、中身が濃い感じのするアルバムです。好きなアルバムです。見た目が華やかです。わりと「黒谷山」系の曲が多いので、黒ファンには人気があります。ジャケット写真に映っているお花は、スタジオに行ったら用意されていて、持たされました(笑)。」

歪んだ王国

1992年6月3日

キャニオン/AARD-VARK
PCCA-00370

紙ジャケットシリーズ
2011/9/14
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
YCCW-10148
(Blu-spec CDTM仕様)

  1. 王国
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:石井AQ・谷山浩子
  2. 会いたくて
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:石井AQ・谷山浩子
  3. さよならのペガサス
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:倉田信雄
  4. Elfin
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:斎藤ネコ
  5. アーク~きみの夢をみた
    作詞:水沢めぐみ・谷山浩子
    作曲:谷山浩子 編曲:斎藤ネコ
  6. 悲しみの時計少女
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:渡辺等
  7. 落ちてきた少年
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子
    編曲:石井AQ・谷山浩子
  8. 気づかれてはいけない
    作詞:綾辻行人 作曲:谷山浩子
    編曲:渡辺等
  9. 時計館の殺人
    作詞:綾辻行人 作曲:谷山浩子
    編曲:斎藤ネコ
  10. HATO TO MAGI
    作詞:谷山浩子 作曲:谷山浩子

アルバム解説

思わず、「ゴシックロマンの世界へようこそ!」と叫びたくなるアルバム。黒谷山の世界が凝縮された、90年代屈指の名盤と言えるだろう。谷山さんは80年代に多くの組曲を作り、独自の世界観を表現してきたが、その進化版がこの『歪んだ王国』ということになる。とりわけ、ファン投票で上位トップ3の人気を誇る「王国」を1曲目に収録していることが大きい。「王国」はCD発売前の大阪のコンサートで歌い、早速その直後から過去に例がないほどの反響が寄せられたという。谷山ファンの中でいかに重要な曲であるかがうかがえるエピソードだ。全カタログ中、最もコンセプチュアルなアルバムの中の1枚であるににもかかわらず、提供曲が4曲収録されているのも見逃せない。「悲しみの少女時計」は同タイトルの小説をもとに作られた歌で、小説はラジオドラマ化もされたが、評判がよく、再放送が繰り返されたそう。個人的には「アーク~きみの夢をみた~」がオススメ。

谷山浩子さんの一言

「このアルバムは黒谷山ファンには特別視されています。個人的にはボーカルが淡々としているので物足りないんですが……。CDが発売されて、ライブで歌っていくうちに歌い方が定まってきたということもあり、そこの部分が心残りではあります。だから今回の『ROLLY&谷山浩子のからくり人形楽団』に「Elfin」を再録できたことはうれしかった。「王国」を最初に作ったときは小曲のつもりだったんです。思ったより長かったこともあって、レコーディングをしているうちに、いつしか壮大な大曲になってしまいました(笑)。」