文/長井英治
1988年5月21日
キャニオン/AARD-VARK
PCCA-00270
紙ジャケットシリーズ
2011/8/17
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
YCCW-10143
(Blu-spec CDTM仕様)
1988年に発売された「こども向け」の歌を集めた作品集。アルバムタイトル曲の「しっぽのきもち」「おはようクレヨン」「まっくら森の歌」「恋するニワトリ」はNHKの「みんなのうた」で流れていた曲として広く知られている。なかでも「恋するニワトリ」は今年の「猫森集会」で共演する持田香織の生涯のフェイバリット・ソングとして挙げているほか、谷山さんが楽曲を提供している声優の豊崎愛生もイベントで披露している。古くはアイドル・グループのCOCOもコンサートでの定番ソングにしていた時期があったという(COCOは「しっぽのきもち」もカバー)。「恋するニワトリ」は時代を超えて幅広く愛されている。「かなわない片思い」という普遍的なテーマを風見鶏に恋する雌鶏というシチュエーションに置き換える手法は谷山さんならでは。子どもの頃に「恋するニワトリ」を聴いて育った少女が、いつか成長して本当の恋を知ったときに、この曲の描くせつない気持ちを実感するのかもしれない。
「当時のディレクターから「そろそろこういう(子どもの歌)の出してもいいんじゃない?」と言われて、それまでに発表した子ども向けの歌を集めて作ったアルバムです。NHKの「みんなのうた」は何回も再放送されているので、いろいろな世代の方が成長していく過程で自然に耳にしているんでしょうね。ジャケットの伊藤正道さんのイラストは、私がどこかで見つけてきたんですけど、どこで見つけたかは思い出せないです」
1989年1月21日
キャニオン/AARD-VARK
PCCA-00271
紙ジャケットシリーズ
2011/8/17
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
YCCW-10144
(Blu-spec CDTM仕様)
『夢みる力』の取材のとき、谷山さんは「タイトルの『夢』は夜にみる『夢』のこと」と言った。いまでは「夢」とは夜にみる「夢」よりも、人が何かに向かって努力しているときの最終目標、あるいは将来的な希望として使われることが多いので、その言葉を聞いたとき少々驚いた。谷山さんの曲の舞台設定は一見、人が夜眠っているときにみる「夢」のように、少々現実離れしていているものが多い。しかし、谷山さんにとっては眠ったときにみる「夢」は、実際に行くことが出来るもうひとつの世界なのではないだろうか。年を経ると行くことが難しくなる夢の世界の扉を、谷山さんは開けることができる、そんな気がする。1989年に発売されたこのアルバムを聴くと、『お昼寝宮・お散歩宮』というタイトルが表出する世界観が、けしてフィクションではなく、谷山さんが見聞きしてきたものを、そのまま音楽として表現しているようにかのようだ。谷山浩子というアーティストは知れば知るほど、その音楽を聞けば聞くほど、その奥深さに怖くなることがある。それはまさにこのアルバムのような作品を聴いてしまったときだ。
「スタッフから「組曲は売れない」と散々言われ続けて来たのですが、このアルバムはお願いして作らせてもらいました(笑)。サンリオから出した3冊目の本と同タイトルのアルバムです。本を書きながら同時に曲が出来たので、小説のサウンドトラックのようなイメージです。組曲に関してはこのアルバムを作って気が済んだというか、やりきった感じがあります。これは最後のアナログレコードのLPだったんですけれど、時代はすでにCDが一般的になりつつあったので、最初にこのジャケットを見たとき、CD用に作ったジャケットをLPサイズに引き伸ばしたような感覚がありました。何だか間延びして見えたのを覚えています」