雨は大好きです。空の上から水が降ってくるって、異常事態だと思うのに誰も不思議に思わない。それがわたしには不思議です。夜の雨はそれほど好きではありません。ちゃんと空の上から降ってくる雨が見えないから。わたしの好きな雨の降り方は自分のいないところで降っている雨。自分は部屋の中にいて外は雨とか。自分が外にいてもいいけど雨に濡れなければいい。例えば海辺の四阿（あずまや）にいて周りは見通しが悪いくらいの土砂降りとか。以前、葛西臨海公園に行ったとき、途中で雨が降り出したので、海が見える四阿で雨宿りをしたことがあって、それがものすごく気持ちがよかったんです。でもあれは本当にあったことなのかどうかはっきりしません。もしかしたら夢かもしれない……。あと温泉街の雨も好きです。観光地の雨はいいですね。昔、コンサートで長崎に行ったときに、ツアーメンバー全員で足を延ばして雲仙に行ったことがあるんです。そうしたら、バケツをひっくり返した雨とはこのことか、というくらいの豪雨にあたってしまい、丸二日間何もできなかった。まったく外に出られずに、やることといったらみんなで窓から雨を見ているだけ。「今外に出たら死ぬね、この勢いは」なんてバカな話をしてたら、窓の下、豪雨の中を必死に走ってくる出前持ちの人が見えて、わたしたちの中だけでヒーローになりました。あの光景は今でも忘れられません。わたしの唯一の雲仙の思い出です。あと、去年（2011年）、台風が直撃した「猫森集会」の公演日に、スペース・ゼロの玄関ホールから見た暴風雨も忘れられません。